夏の騎士
2019年10月19日 18:51:54
久しぶりに手にした児童文学的な本である。
百田尚樹が３年ぶりに書き下ろした小説である。
子供向けにではなく、大人向けに書いた文章なので、
読んでいて、なかなか面白い展開が待ち受けている。
帯には「あの夏、僕は「勇気」を手に入れた。」と。
「勇気ーそれは人生を切り拓く剣だ。」とも。
勇気には、自己を守るための勇気と、
他者を活かすための勇気がある。
僕の勇気は、もちろん、自己を生かすための勇気である。
少年が、後ろ向きに生きている日常から、
前を向いて一歩、歩み出す勇気を得たのである。
この勇気の味は、自己陶酔を招く。
もちろん、ヒーローになった気分でさえある。
僕は、それまでの自分から、ひとつづつ殻を破り、
大人の男へと成長していく。
そんな、成長の物語が懐かしい田舎の風景を伴い、
私の脳裏に蘇るのを実感しながら読み進めた。
マドンナへの憧れと現実への挑戦は、僕にとって
試練であると同時に、生きる目標でもあった。
残念なのは、童話的な物語から現実への覚醒が、
エピローグの最後にある僕の結婚話で引き起こされたことである。
これは、蛇足としか言いようのないものである。
この物語を現実として固定化する必要は全くないと感じた。
僕の最後の言葉は、嫌味にしか聞こえてこなかった。
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